子どもの頃、大人になったら、もっとなんでもちゃんとできるようになるんだと思っていた。
大人になったら、悲しみや苦しみと無縁で生きていられるようになるんだと思っていた。
二十代も半ばになって、私の両手には何もないし、抱える悲しみや苦しみの本質は子どもの頃から変わっていない。
心やさしい父のような人になりたかった。
頼りになる母のような人になりたかった。
スーパーヒーローになんて憧れなかった。
日常を当たり前に紡いで、生活を当たり前に守ることのできる人になりたかった。
今日は、薬がよく効いている気がする。
今からでも遅くないか。
そう、信じてみようと思えた。