教師になって、4年の年月が過ぎた。
私はわりと上司に恵まれてきた方だと思う。
前任校の校長先生、教頭先生、初任者指導の先生、学年主任。
そして、現任校で2年前、一緒に学年をもったS先生。
この5人に出会わなければ、とっくの昔に教師なんて辞めていてもおかしくはないのだ。
現任校にきて、3年。
中学校から、小学校への異動。
免許を持っているから、小中連携の人事交流だから、いつかは帰れるから。
そんな言葉で納得できるわけがなかった。
クラスも、校務も、私生活もぐちゃぐちゃだった。
放課後、自分の教室で立ち竦む私に、通りかかったS先生が声を掛けてくれたのを、今でも覚えている。
「4月に手に入れて、3月には手放す。クラスって案外儚いものよね。毎日顔つき合わせてると、忘れちゃうんだけどね」
S先生は、あの時、なんで私にそう言ってくれたんだろう。
普通の世間話の途中に、さらりと挟まれたその言葉が、それからずっと、私の指針になった。
この3月の中旬、内示が出た。
市内の中学校への転任が命じられた。
今年は転任希望は出していなかった。
今年のクラスは落ち着いていて、この子たちと次の学年へ上がりたいなと思っていた。
こればかりは教育公務員の宿命だから仕方がない。
この3年間を人は回り道だとか悪足掻きだとか無駄だとか呼ぶのかもしれない。
それでも、この悪戦苦闘の日々の中で拾い集めた、ちっちゃくて、きれいな、ただの丸い石ころみたいな物を、多分私は後生大事に抱えて生きていく。