ーーウェルテル効果は、高校の倫政の授業で習ったんだったなあ。
日曜の朝、ベッドに沈んだまま、そんなことを考えていた。
前の日の晩からつきっぱなしのテレビの画面。速報のテロップ。飲みかけのまま、ぬるくなった缶チューハイ。誰かからのLINEの通知。
目の前に転がるぼんやりとした「生活」が、徐々に輪郭を取り戻す。
靴を買いに行こう、と思った。
再来週、運動会だから。新しい靴を買おう。今年は黄組だから、黄色の入ったスニーカーなんか買っちゃったりして。
先生、気合い入ってるね、なんて笑われるだろうか。笑われたっていいか。あの子たちと同じぐらい、思いっきり走れるスニーカーを買って、そして、あの子たちと同じように走ろう。
テレビは消した。
あともう少し、走らなきゃと思った。