大学4回生の冬、国語教育専攻の仲間と研究室で夜遅くまで色んなことを語り合った。
教育について、国語について、恋について、人生について、命について。
私たちは世間知らずな学生だったけど、あの時間ほど誠実に言葉を尽くしたことは、それまでにもそれからにもない。
「教育者にとって、一番大切なものは何だと思う?」
それが、あの頃の私たちの定番の話題だった。
教員になって、現場に出て、3年経った。
今の私なら、その問いに、「マルチタスク処理能力」と答える。
怒濤のような、文字通り山ほどある仕事をかき分けてかき分けて進んでいく力強さ。
力の無い者が簡単に踏みにじられる、そんな様子ばかりを、ずっと見てきたから。
それでも。
大学4回生の私は、その問いに、「誠実な心」と答えた。
何もない私に出来ることは、真正面から向き合うことだけだと、その時から知っていた。
仲間のうちの一人は、「揺らぐ魂」と言った。
正しさも、美しさも、悲しさも、全てのものは揺らぎ、移ろう。だから、私は揺らいでいたい、と。
このところ、そんなことばかりを思い返している。